縦横学と囲碁

007_1

 諸子百家の主要九流の中に「縦横家」は入っているが「兵家」は本来は入っていない。『孫子の兵法』であまりにも有名であり、戦略学の永遠のベストセラーとまで言われているにもかかわらず何故なのか。孫子の兵法の「戦略」に対して縦横学では「軍略」という考え方を持ち、「戦略」は軍隊の進退を論じるのに対して「軍略」は国家の進退を論じ、「戦略」が戦いに勝つための方法論に対して「軍略」には根底に組織の「経済思考」が入る。つまり「戦略」は「軍略」の一部分であり、中間管理者のためのもので組織のトップにとって「戦略」よりも「軍略」が重要で「軍略」は組織トップの予測・対処・準備の学問である。

 この関係を「囲碁」と「将棋」に置き換えて考えると縦横学が「囲碁」であり、孫子の兵法は「将棋」の世界と考えられる。「将棋」は決められた戦いの編形の中で如何に有利に行動して早く王将を追い詰めるかに対して、「囲碁」は全くの無の中から全体を見ながら布石をして自分の領域を拡大することで勝敗を決める。正に「戦略」と「軍略」の明確な違いが感じられる。特に「囲碁」の正式の19路盤は碁盤の中心の「天元」を次元として『次元とは伏せることを常とする』ことから19×19=361から1を引き360度の宇宙の広がりとした。そして縦線と横線の交点に白黒(陰陽)の碁石を打つことは縦横学の世界と余りにも共通していることに驚かされる。それもそのはず『書経』には堯帝が不品行な人物の教育のために囲碁を創ったという話が載っている。つまり人間関係図に方向を入れて定め創られたものと考えられる。それは生きることを縦線と横線の交点において、一目置く、手を打つ、駄目押し、布石、定石、捨石、死活問題、傍目八目、大局観、劫(コウ)などいずれも囲碁に由来する慣用表現で処世術を説き、特に組織のリーダーに「囲碁」を薦める所以がそこにある。

 呉清源九段の言葉に「碁は調和にあり」とある。囲碁は白と黒の調和の上に成り立っており、お互いに調和を破らないように打ち、終局に僅かなバランスの違いで勝敗を決める。正に人間関係を説いた人間学である。

2014年6月28日